乗合自転車の雑記帳

広島関連、漫画・アニメ関連の話題が多くなると思います。主にTwitterの補完として。

魔城伝説III シャロム(追記)

今回は昔のゲーム作品について書いてみます。

私が小中高の頃はMSXが家庭用パソコンとして普及しており、コナミもその対応ゲームソフトを多数開発、販売していました。「魔城伝説III シャロム」(コナミ・1987・MSX、以下「シャロム」)もその一つなのですが、これが私にとってのベストゲームです。未だ持ってこれを越える作品とは出会っていません。

どんなゲームかと言いますと、主人公はゲームの世界に引き込まれたごく普通の少年(プレイヤー自身)のアドベンチャーです。フィールドを移動して村人と会話して、謎を解いたりアクションゲーム形式(他の形式もあり)でボスを倒し、主人公をゲームの世界に呼び込んだ張本人・大魔王ゴグを倒して現実の世界に戻ることが最終目的です。
当時MSXで人気を博していた魔城伝説シリーズの3作目にして完結編という位置づけで、シリーズのファンへのサービスも満載であるだけでなく、なぜか関西系ノリのギャグやダジャレも多く含まれていた作品でした。ゲームのセーブポイントには「セーブを司る」村人がいるのですが、これが全て当時の西武の選手名であったり、「オーマン」という湖があったりなど意味深な仕掛けも。
終盤に登場する箱入り娘パズルにはどれだけのプレイヤーが泣かされたことでしょうか。私もこればかりは解法なしにはクリアできませんでした。
山下絹代氏による音楽もPSG3音とは思えぬ完成度で、ゲームを見事に盛り上げてくれています。

主人公はゲーム好きの高校生で、同級生の女の子がヒロイン。それぞれ任意の名前を入力します。主人公が「シャロム」のゲームを始めようとしたとき、ゲームの世界に引きずり込まれてしまいます。その世界で1匹の雌豚と知り合い「ブタ子」と名付けて、主人公は元の世界に戻るべく大魔王ゴグを倒すための旅に出ます。

ゲーム中盤で過去作の主人公であったキャラクターから、シャロムはプレイヤーである主人公が将来現実世界で猛威を振るうであろう「サタン」と戦うための力を付けるため作られたゲームソフトであると伝えられるのです。ゴグに勝てないようでは現実世界を救うこともままならないであろうと。

さて、シャロムの何がすごいかというと、当時からゲームに対して「ゲームばかりやっていると現実と虚構の区別が付かなくなる」という偏見があったのですが、これを逆手に取ったストーリーにあります。意図的に現実と虚構の区別が付かなくなるような仕掛けを随所に盛り込んでいました。
まず、主人公がプレイヤー自身というのは物珍しくもないでしょうが、シャロムはこれが非常に重要です。主人公の名前を入力出来るのは当時から今においても当たり前ですが、ヒロインの名前も入力出来るのはあまりないのではないでしょうか(カオスシードなどありましたが)。これは女性プレイヤーに対する配慮であると考えられます。このヒロインにも秘密があるのですが、本稿では割愛します。

さらにエンディングでも、詳細は省きますが「全ては現実であり、ゲームでもある」ということを再確認させられるうえに、ゲーム中のキャラクターから「サタン」に勇気と愛を持って立ち向かえと檄を飛ばされます。本作に限っては「現実と虚構の区別が付かなくなる」ことは悪ではなく、むしろそれを促進しているのです。

いわば、私達一人一人は「現実」というゲームの主人公なのです。
ゲームの世界では誰もが勇気を持って悪に立ち向かい、勝利を収めます。
しかし、現実ではどうでしょうか。ゲームの中ではできていたことがなぜ現実ではできないのでしょう。必要なのは運動能力などではありません。愛と勇気、これだけです(顔を食べさせるヒーローとは関係ありません)。
前述「サタン」に対峙しているかどうかはわかりませんが、「敵に勝つ前に己に勝て」と言われるぐらいですから、「サタン」は既に私達一人一人の中に巣くっているのでしょう。サタンに勝つには一人一人の心構えが重要なのです。
何か宗教的な内容になってしまいましたが、「シャロム」はそれだけ壮大なメッセージを込められたゲームなのです。

今でこそ「一人一人がゲームの主人公」というコンセプトはMMORPGなどでは当たり前ですが、これをオンラインゲームなど夢物語であった1987年(昭和末期ですよ!)に既に形にしていたことが驚きです。バグや作り込みの甘さや未完成な部分が随所にありますが、この作品のコンセプトの前には微々たるものです。

しかし、こんなすごいゲームなのに未だ持ってリメイクやバーチャルコンソールなどでのDL販売などは一切なされていません。いろいろ難しいところがあるのでしょう。ですが、こんな時代だからこそ「シャロム」が伝えようとするメッセージが必要なのではないかと思います。
(2017/01/12追記)プロジェクトEGGで配信されています。是非プレイしてみてください。かく言う私は未だ購入していませんが…

www.amusement-center.com

ちなみに「シャロム」はヘブライ語で「平和」の意味で、日常の挨拶としても使われる言葉です。「世界が平和でありますように」というメッセージを感じさせるタイトルです。

いつにも増して取り留めのない文章になってしまいました。後日加筆修正するかも知れません。