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乗合自転車の雑記帳

広島関連、漫画・アニメ関連の話題が多くなると思います。主にTwitterの補完として。

EVE burst error

注意:本稿ではクリティカルなネタバレ記述を含みますが、可能な限り作品の詳細な内容については避けるように留意しているつもりです。15年以上前のゲーム作品であることもあり、「時効」ということでご容赦下さい(「犯人はヤス」みたいなものということで…)。

今回は私が前述のシャロムに次ぐぐらいの衝撃を受けたゲーム作品、「EVE burst error」(シーズウェア)について語ります。

本作は元々は1995年にPC-98用として発売された18禁アドベンチャーゲームだったのですが、1997年1月にセガサターン版が発売されて知名度が上がりました。私はあいにくこのサターン版しかプレイしていません。なので、本稿では他機種版(Windows逆移植版やその後のリメイク含む)などについては一切考慮していないことをご了承ください。

「EVE」の主人公は2人いて、それぞれの視点を任意に切り替えつつ進める「マルチサイトシステム」を売りにしていました。一人目は腕は立つが仕事が少ない探偵、天城小次郎(声:子安武人)。もう一人は政府機関のエージェント、本城まりな(声:岩男潤子)です。複数の視点から1つのストーリーを進めるという手法は前作である「DESIRE」でも採用されていましたが、その完成形であり金字塔であると言えます。
18禁ゲームの移植版だけあってお色気要素も豊富で、18歳以上推奨のレーティングで発売されました。殺人描写のグロテスクさもあったためでしょう。
コンシューマ移植にあたってフルボイス化され、豪華絢爛な声優陣も話題となりました。野沢那智若本規夫納谷悟朗茶風林飯塚昭三(全て敬称略)など、当時としても相当の大御所を揃えて大人のエンターテインメントを強力に演出していました。しかも、前述の彼らは全て脇役なんですよ…!子安武人演じる小次郎は稀代のはまり役であったことも印象に残っています。

ストーリーについて。まず物語の最初で、まりなは御堂真弥子(声:岡本麻弥)という少女の護衛を任されます。その護衛任務の間にまりなは真弥子との交流を深めていきます。
小次郎のシナリオではこの真弥子の本格的な出番はかなり後半にならないとありませんが、非常に衝撃的な形で登場することになります。では小次郎はそれまで何をするかというと、とある中東国家関係者の殺人事件の捜査にあたります。しかし捜査が進むごとに連鎖的に殺人が発生し…と言う内容です。この2つのストーリーが一本の線につながっていくさまは見事としか言いようがありません。続編などでもマルチサイトを採用していましたが、1作目である本作を凌ぐことはかないませんでした。

さて、EVEの何に衝撃を受けたかというと、ラストシーンでの真弥子の台詞です。

「笑ってよ、ねぇ…そうしたら私、幸せになれる。生まれてきた意味がある…」

どういうシチュエーションでこの台詞を発するかについては避けますが、わかりやすく例えると「自分の死に際に、周囲が深刻そうな顔をしているときに、とても安らいだ表情でこの台詞を言う」のです(真弥子は実際に死ぬわけではないのですが、あくまで「例え」ということで)。
エンディングはそれまでの殺人事件の解答編でもあるのですが、私はこの台詞一つに全て持って行かれ、「やられた」と思いました。と同時に、真弥子の運命と生き様に目から汗を拭いきれませんでした。
しかも、この台詞は物語中盤でまりなが真弥子を励ましたときの言葉を少し言い換えただけのものだったのです。

「人は皆幸せになる権利がある」
「笑う門には福来たる」

どちらもよく耳にする普遍的な言葉ですが、これを彼女なりに咀嚼して、その悲しい運命を知った上であのシチュエーションで情感たっぷりに問いかけられたら、涙腺崩壊は不可避です。コンピューターゲーム史に残る名台詞であると断言できます。

それと同時に、菅野ひろゆき氏はこの台詞を言いたい(真弥子というキャラクターを紹介したい)がために「EVE」というゲームを、小次郎とまりなを、壮大な世界設定を、前述のマルチサイトシステムをも作り上げたのではないかとさえ思えてしまうのです。
一人の視点で真弥子の全体像を浮かび上がらせるのは難しい、ならば他者の視点を用意しよう…という発想からマルチサイトシステムを採用したのでしょう。シナリオの手間が膨大になるのを承知の上で、このシステムを取り入れたのは感服です。菅野氏は若くしてもう鬼籍に入られてしまったのでもう検証が難しいのですが…

たしかにミステリーものとして見ると犯人捜しはほとんど困難な「無理ゲー」なのですが、本作はミステリーというよりは「大人のファンタジー」と言えるものなのでしょう。御堂真弥子という素晴らしいキャラクターを作り上げた故菅野ひろゆき氏に心から敬意を表します。

菅野ひろゆきメモリアル-Device to the skies-トリビュートブック

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